オロロンラインを走り、風車を見届けた。
日本最北端の稚内まではあと40kmほど。
ひたすら進む。
廃墟が多い。冬が忙しいのだろうか?誰も居ない漁港が点点としている。
色褪せた風景。網を仕掛けるウキのオレンジ色だけが残ってる感じ。
海の向こうにある、利尻富士は、雲が流されて、少しずつその山体を晒していた。
途中、道路の待避場所みたいなところに車を止めて、何か海の方へ歩いて行ってる人がいる。
釣りっぽかった。あと、利尻富士を写真に納めたりする人。
信号もなく、誰にも気兼ね無くレクリエーションできるところなんだろうな。
稚内に入り、風は一層強くなった。
時々吹き飛ばされそうになるほど。
地吹雪の看板がある。風が強い証拠だ。
海沿いで山が右手にあり、吹き下ろす形で襲ってくる。
ビル風みたいにテンポのない突発的な強い風も吹いてくる。
ロシアめ!!!!(ロシア関係無いです)
この風はずっと吹き続けた。
稚内の市街地に入る前、また寂れた町がある。
抜海。
人の気配が薄い。
朝方は気持ちよく晴れていた空が、重々しくどんよりとした空気に変わっていた。
ちょくちょくフロントバッグに入れていた補給食を食べていたのだが、そろそろ尽きる。
思えば北海道に来て、コンビニ飯以外、なにも食べていなかった。
そろそろ暖かい食べ物が欲しい…
どこか大きな町があればそこで何か食べよう…と常々思っていた。
抜海の町を抜けて、さらにペダルを回す。
稚内:右の分岐があったので迷わずそちらへ。
左へ進むとノシャップ岬へと続いているようだ。
普段なら何ともないような丘だが、ここに来るまでに意外に磨耗してたのか、足が悲鳴をあげる。
風も重く、インナーにいれてクリア。
稚内の町へ。
ここが日本最北端の町…
稚内は活気のある町だった。
昨日まで見てきた北海道の町のなかで札幌に次いで活気があった。
すき家、マクドナルド、車のディーラー、なんだこの充実っぷりは?!
本当に最北端の町なんだろうか。と思わずにはいられなかった。
あぁ、こんなに大きな町なら、食べ物屋さんもあるだろう…と思い、検索してみた。
道の駅?海の駅?があるようで、その建物を探して入っていった。
舞鶴港を訪れた時もあった、地元の漁港からあげたての海鮮の品物が並ぶ、海の駅。
自転車ラックがあった。なんだろ、すごくうれしいじゃないか…こんな町にまで…
それとも風が強くてラック無しでは自転車は倒れてしまうのかな?
中にラーメン屋があったので、おにぎりと醤油ラーメンを頼んだ。
時刻は12時ごろだっただろうか?人が多かったけれどうまくカウンター席に座れた。
出てきたラーメンをデジイチで撮影してると、
隣の女の子もミラーレスっぽいので食べる前に撮影してた。
いただきます。
札幌からここまで、ずっとセイコマのお世話になってた舌には、とてもいい刺激になった…特段取り立てて書くようなことも無いけれど、美味しいラーメンだった。
『ごちそうさまです!』
と、どんぶりを置く。
ビンディングシューズにクリートカバー。子供が奇異な目で見てくるが、お構い無しだ。
トイレを済ませ、館内にあったベンチに腰かける。見ると、最北端の町の案内図や、開拓の歴史を教えてくれるパネル展示があった。
そして、
"ここから宗谷岬まで33km"
そうだ。日本の、北の果てまで、あと33kmしかない。
ここまで来たら、行くしかないだろう…!
外の自販機で
ホットコーヒーを飲んだ。立ち止まると肌寒い。
ペダルを踏みしめて、稚内の町から走り出した。
風は重い。
町を抜けて、海岸線を走るのだが、風があまりにも強くて、吹き飛ばされそうになる。
車が追い抜いていくと、空気の塊がぶつかり、まともに立てなくなった。自転車がバランスを崩し、倒れそうになるが、踏ん張った。一度止まると、ステップインすら難しい状況。
『行くだろ!』
何度も問いかけた。
やっとのことで路肩の狭いゾーンを抜けて、歩道のあるところまで来た。
車に跳ねられそうで危険なので、歩道を行くことにした。15km/hも出ない。
風はロシアから吹いているのだろうか。
冷たく重い。
気温は10度あるかなぁ…ってところ。
長いレーパンも履いててちょうどいいくらい。
シューカバーはしてないのですこし冷える。
カモメがたくさん飛んでいる。ミャアミャアと賑やかだ。
交通安全の旗がバタバタと煩く翻る。
この宗谷岬までの30kmが、とても長く感じた。
見えた…!
あれが宗谷岬。丘の先に張り出したモニュメントが見える。
稚内からバスが出てるみたいで、観光地になってた。
フル装備のジャケットやパンツを履いて、傍らに重装備の自転車を携えた私が、とても場違いに見えるほど、軽装の観光客がバスから降りて来てはモニュメントの前で記念撮影をしている。
なかには上半身裸になって撮影をするのもいたり。ヤメテー
立ち止まると寒いので、手短に私も記念撮影を済ませた。
最北端のモニュメント前で、まどまぎの痛ジャージをおっぴろげて記念撮影しようと思っていたけれど、あまりに人が多いので恥ずかしくて自粛した。
で、モニュメントからすこし離れたところで撮影したのがこれ。
ん、あまりに風が強くてジャージが飛ばされそうだったのでうまく撮影できませんでした。ごめんなさい()
寒かったので、モニュメントからすこし離れた最北端のセイコマでホットコーヒーとお菓子を食べた。
帰りにエゾシカの群れと遭遇した。
人には慣れているようで、落ち着いた感じでこちらを見てる。
帰りは追い風で、なにもしなくても勝手に自転車が進む。ハンドルをしっかり握っておかないと、あらぬ方向に進むので、コントロールだけはしっかりしておいた。
稚内の町へ戻る。この往復50km、とてもながく感じた。
公園があったので、そこでトイレをするついでに、宿を予約した。
17時30分ごろ。宿のチェックインは19時00分。
時間に少し余裕があったので、稚内駅の横の道の駅で、イクラ丼を食べた。
うん。こういう北海道らしいグルメこそ…という感じ。
宿に着く前に雨が降ってきた。軽い雨だ。
ホテル宗谷にチェックイン。
自転車は輪行袋に仕舞って、部屋にもって上がろうと思っていたが、宿主が宿の裏に置いていいですよ。と言ってくれたのでそうすることに。ありがたい。
建物は、昭和の趣がよく残る感じであった。
テレビはさすがに液晶テレビだった。
適当にセイコマで買ってきたおやつなんかをつまみながら、シャワーを浴び、ストレッチ、荷物を整理したりスマホに充電したり。
バス停で二時間仮眠しただけなので、ほとんど寝ていない体に、布団は優しかった。
21時には寝た。
明くる日、私は7時30分に目が覚めた。
たしか、アラームは6時に予約してたはずなのだが、疲労とか睡眠不足で寝過ごしたらしい。
ありゃー。
昨日、宿を予約する前に、札幌までの列車の時刻を調べていたのだが、7時代発の電車に乗ればまだ早い時刻に札幌に戻れる。
次の列車は10時51分だ。
まぁ…いいよね。と布団にもう一度潜り込んでた。
日曜だったのでテレビで仮面ライダーがやってた。
窓の外に目をやると、雨は降っていない。
とりあえず荷物をまとめて、チェックアウト。時間もあるし、郵便局でレターパックを使い、不要な荷物を自宅へと送り返した。
レターパック、ゆうパックは、"ゆうゆう窓口"のある郵便局なら扱いがある。ゆうゆう窓口は、遅いところで24時まで開いてる。
コンビニでもゆうパックが使えるが、レターパックはゆうゆう窓口で使えて、510円だ。
商店街を通るとき、ロシア語の表記が目についた。
かつてはロシアからの観光客で賑わっていたのだろうか。今はシャッターが降り、閑散としていた。
駅に行き、10時51分発の列車の切符も予め購入。
終点。
稚内駅から、札幌駅まで、特急を乗り継いでも、実に7時間ある。新幹線であれば、東京から博多に行けるぐらいではなかろうか?
北海道は車にとっても、鉄道にとっても、自転車にとっても、広大なのだ。
その7時間、めっちゃ暇だろうなぁ…と思い、本屋さんでラノベを3冊ほど買ってきた。
アクセルワールドの2、3、4巻。
電子書籍なら持ち運びが便利なのだが、電源不要の紙の本もこういうとき便利だ。
輪行袋に自転車を仕舞い、列車に乗り込んだ。
一両編成、ディーゼルエンジン駆動っぽかった。"列車"と書いてたのもそのせい。
駅のホームに、指宿駅まで3084km、東京駅まで1574kmの表記を見つけたので撮影。
以前に鹿児島県の九州最南端、佐田岬までは行ったことがある。指宿の方はどんなのか知らなかったが、あちらも風力発電が並び、桜島が見えた。果ての景色は、なんとなく似通っていた。
自転車を倒れないように手すりに結び、
アクセルワールドを広げた。
車内は10人乗ってないくらい。
本を読みつつ、時おり窓の外に広がる景色にカメラを向けたりしていた。
名寄駅で乗り換え。また同じような車両、二両編成。
旭川駅で特急スーパーカムイに乗り換え。
札幌駅に着く頃には18時前だった。
ん、8時間かかったのか…
殆ど移動日だな。
二度目の札幌駅。
札幌に着いて、今度は読み終えたアクセルワールドをレターパックで自宅に送り返した。
レターパック、ちょっと勿体ない使い方をしてしまったかな。今度はタイミングを考えて使ってみよう。
コンビニで補給も終えて、函館へと走り出した。
Google先生の計測では243km!これを走りきれば北海道を縦に貫いたことになる。行こう。
札幌から、函館へと向かうにあたり、中山峠があるのは知っていた。
で、なぜか札幌からずっと上りなのだ。
札幌は盆地?なのだろうか。
しかも中山峠は札幌からわずかに37kmしか離れていないらしい。
最初にメインディッシュがある感じ。
キャノボだと
東京から横浜のとなりに箱根がある感じ。わかりやすい。
ただ国道230号線、交通量が多い。
中山峠の手前に定山渓というのがあり、
ここも割りと有名な観光地みたいだ。温泉街が脇にチラチラ見えた。
札幌の町を離れていくにつれ、星が見えるようになってきた。
そういえば、Twitterのフォロワーさんで、菰野ヒルクライムの時に挨拶させてもらったしおさん(@NISHIO_tcr)が先に北海道に来ており、星が綺麗だった!とツイートしてたのを拝見してた。
なるほど、これが…!
中山峠のピークに向かうにつれ、空気が澄んでくる。ただ、道は悪かった。路肩はボコボコで、油断するとリムごと死ぬ感じ。夜だし、特に気を付けた。あとトンネルは路肩殆どなし、車に跳ねられそうで怖いw
で、中山峠ちょっと手前で星を撮ろうとしてた。
流れ星!見えた。
中山峠を下ったローソンで、軽く休憩。
寒い。
長レーパンの上から3/4レーパンを重ねて、シューカバーが無いのでコンビニ袋で防風。
洞爺湖がもうすぐらしい。
車通りも疎らになってきたので走る。
真っ暗な道、ふと道端に目をやると残雪。北海道の夜は静かすぎて耳が痛い。
道の駅洞爺湖に来た。
トイレを済ませて退散。230を外れて湖畔の方へ。
途中、キツネに出くわした。二度目の遭遇。
湖畔沿いはキャンプ地になっており、オートキャンプのサイトがいくつもあった。さすがに深夜(25時)なので、誰も居ないけど、明かりだけは付いていた。
洞爺湖の周りはガードレールの無い道路。道を踏み外せばドボーン。
しかもカーブが多い。
遠くに街が見え、湖面に反射して、幻覚を見ているように思えた。
そして、空を見上げたら…
スローシャッター30秒、ISO1600
その後は道の駅豊浦で二時間仮眠をとった。眠すぎた。
朝4時ごろ、トイレの壁にもたれて休んでいたところから起きた。曇りで朝焼けは見えなかったが、函館まで残り140kmほどだ。
行こう。
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