2015年12月8日

中華カーボンは何がヤバいのか

昨今、ヤフオク、ebayや、Amazon、のマケプレに氾濫する安価な中国製カーボンファイバー製品。

いわゆる中華カーボン。




世界の工場として発展してきた中国は、人件費の安さ、電力の安さなど、
様々な要因で高い工業力がある。


例えばレイノルズ社は中国にかなり大がかりな普及グレード向けのカーボンリム工場があるらしく、
シマノの9000-Cxx-TU、フルクラム・レーシングゼロカーボンのリム、
DT swissほか無数のブランドからOEMを引き受け、
カーボンリムの価格破壊を起こすまでの圧倒的なスケールがある。(ハイエンドは未だアメリカ製のようです。)


セール時にはペア14万円を切るお手頃価格で出てくることもある。中国の工業力がいい方向に作用している例です。

しかし、モデルチェンジやマイナーチェンジで不要になったフレームの金型を流用したり、本物から形状を取り込んだり、
どこかで見たような形状、OEMか?と読み違えさせ、廉価で売られていることが多い。


ここではそんな粗悪で廉価な方の中華カーボンについて、少し書いてみようと思う。


偽ブランド品はもちろん違法



ルイヴィトンとかシャネルとか、服やカバンの偽ブランド品は言うまでもなく
商標権の侵害で、訴訟を起こされる可能性があります。

自転車のパーツも同じでしょう。







画像の出典


本物のピナレロ・Dogmaは現在でもイタリア製です。





画像の出典 チームスカイ公式twitter


Pinarello社、TIME sports社などから偽物フレームへの注意を促す案内も出ています。



velonewsによる精密な検証

Not all frames are created equal. A look deep inside the carbon in counterfeit bikes

http://velonews.competitor.com/not-all-frames-are-created-equal-a-look-deep-inside-the-carbon-in-counterfeit-bikes

最近だとebayの偽ブランド品の中華カーボンの商品画像にモザイクが掛かってて笑います。
以前は堂々と3Tだの、なんだのと画像を載せていました。



どうやら訴訟対策のようです。

しかも、これら偽物は、真贋の鑑定が難しい
パッと見で判別出来るほど安っぽい仕上げなら分かりやすく注意できますが、
金型を流用している可能性がある≒ほぼ同じ形状、

さらに塗装やプリントについてもIllustratorのようなデジタルデータから制作してしまえば、ほぼ分からない。
パソコンさえあればファイルのコピーが簡単なように、簡単に偽物が作れてしまうんですね。


入手経路がマスクされやすい中古市場、特にオークションに入るとほぼわかりません。
個人で買う分には問題ありませんが、オークションで本物と偽って販売すれば詐欺になります。





本当に東レの炭素繊維なのか?


中華カーボン、パッと見は塗装も綺麗で、これなら普通に使えそう…?と思わされるかもしれない。


日本製の東レ・カーボンファイバーT700とかって書いてるし、大丈夫だろう…


と思ってしまいますが、本当に東レのT700なんでしょうか。
台湾にFORMOSA plasticsという炭素繊維メーカーがあります。

ここの繊維は東レより1〜2割安いです。
FFWDのホイールの説明に出てくる、"TC35"ってな炭素繊維の製品名がありますが、
これFORMOSAの製品名です。
炭素繊維はその成分がほぼ炭素で出来ており、
炭素繊維だけ取り出して強度試験にでもかけないと、見分けることが非常に困難です。

もちろん東レを使っているファクトリーもあると思います。


また、昨今は何百というカーボンシートを組み合わせ、
時間をかけてフレームサイズごとに剛性をコントロールするなど、
非常に高度な技術で設計されています。

レイアップスケジュールとか言います。





https://youtu.be/kN9CIRwaaBk



MERIDAのハイエンド、SCULTURA 9000です。普及グレードならば250枚のシートを重ね合わせるだけで終わりですが、

これはハイエンドなので400枚のカーボンシートを重ね合わせて作ります。全部手作業で熟練工にやらせているそうです。





http://www.mtb-news.de/news/2015/10/06/hausbesuch-trek-bicycles/



こちらはTREKのマドンのカーボンシートです。アメリカの自社内ファクトリーで作られます。
これで全部ではないと思います。



Pinarello Dogma F8のホワイトペーパーの記事もどうぞ。

使うべきところにT1100Gを使っています。


もし金型を流用していたとしても、レイアップが滅茶苦茶だと、部分的に薄くなったりして
設計した強度が出ません。よくある、素人が乗っても剛性が明らかに
おかしく極端に変形する中華カーボンは、これが原因かもしれません。


ただいいカーボンを使えばいい、というわけではありません。






樹脂もヤバい



カーボンフレームやホイールは、今のところエポキシ樹脂を染み込ませたシート
(いわゆるプリプレグです)
を金型に貼り付けて熱で硬化させ、固める製法が主流ですが、
硬化温度が130度〜ぐらいの樹脂を使うのが普通です。

EASTONなんかはこの金型の温度管理について徹底してます。


EASTON birth of carbon wheel

https://youtu.be/ZxTWSTo2_4Q





この動画の 3分7秒あたりです。

温度計のプローブ(先端のセンサー部分)を金型に当てて見てます。
中華カーボンではここらへんも電気代をケチっていい加減な温度管理をしていれば、
硬化不良となり、設定した強度が出ません。

最悪壊れます。




VOID(空隙率)


TREKのOCLV(optimum conpaction low void)技術にあるように、
カーボン製品にはどうしても重ね合わせる層に空隙が生じます。
この空隙率は寿命、強度や重量に直結するものなので、
各社慎重に品質管理にこれを取り入れています。


こちらはいい見本として、カーボンコラムスペーサーです。





コラムスペーサーみたいな円筒形で厚みも均一なものはマンドレルという棒にカーボンシートを巻きつけて固めるので、比較的ボイドが出来やすいそうです。

この黒い部分がボイドです。

特に高い強度が必要な部分では無いのでこれぐらいボイドが存在しても問題ありません。


このボイドからカーボンの層同士が剥離し、最悪破壊に至ります。
品質管理の行き届いているメーカー製のものではこの空隙率がコントロールされています。




仕上げが荒い




先日、友人から不要になった3Tの偽物とおぼしき中華カーボンステムを貰う機会があったので
コラムをつかむ部分を観察してみました。

機械加工で真円度、精度をあげているのか、カーボンの生地が見えます。
ボイドが見えます。

純正品ならばチタンボルト、チタンナットを使っている部位が磁石にくっついたので、鉄系のボルトです。

チタンボルトは非磁性です。

純正品のチタンボルトもポキポキ折れるという報告をちょくちょく聞いた時期があったので()逆に良心的()…いやいやそんなことはない。


こちらも友人から譲ってもらった偽物の中華製FSAカーボンシートポストです。




ぶった切ってみましたが、案外まともな作りで、このまま使い続けても折れることはないかなぁ…という感じでした。

ボイドも大きなものは見当たりませんでした。

ただシートポストのリミット印字が斜めに印刷されており、ちょっと手抜きっぽさが伺えます。



使うべきところ




一方で、傷や破損を気にせず、毎シーズンごとに機材の消費の激しいシクロクロス、落車の多いクリテリウムなどには、無印の安価な中華カーボンリムなどは"アリ"だと思います。

リムが死んでも組み替えればまた車輪になります。




自転車業界にお金が回らない



無数にある中国のカーボン工場から何かしらの商社や、業者を通して売買される中華カーボンですが、

偽物であれば元々設計したブランドに全くお金が行かないばかりか、
自転車業界にお金が還元されません

日本の自転車小売店から目の敵に?されているであろう海外通販大手のWiggleなんかは
日本でもレースを主催しており、なんらかの還元として捉えています。

またWiggleホンダチームとして萩原麻由子選手が活躍していたり、間接的/直接的に還元しているのでは、と考えています。

直販のみのCanyonもサイクルモードに出展して好評だったようですね。

実業団登録していれば割引も受けられます。

カチューシャ、モビスター。グランツールでもお馴染みですね。
メーカーの自転車を買えばそれだけ新しいものが作りやすくなると思います。



中華カーボンにはこういうのがありません。カーボンのどうしようもない偽物が残り
中国にお金が消えていくだけです。





まとめると


・偽ブランド品には手を出さないほうが賢明

・作り方が怪しい

・使うなら安物だと割り切って使おう

・自転車業界にお金は回らない

1 件のコメント:

  1. メリダのとこですが、プレグの枚数がハイエンド>ミドルクラスというのが不思議です。
    動画でいうと3:50あたりが肝で、EPS製法です。これはプレグ枚数を減らす事(というか結果的にそうなる事)が目的です。

    イーストンですが、プローブは単純に余熱を見ているか、校正してるだけかと。
    基本は上下熱板の温度を複数のセンサで常時モニタしてるはずですし、イレギュラーな画だと思います。
    昇温昇圧サイクルが肝です。何より1:24が肝です。これは良い手です。参考になります。

    中華カーボンというのは誰か作ってんでしょうね。不思議です。
    そう簡単にカーボン製品って作れないですよね。ODMが多いので量産メーカーは(法的にももしかしたら)出来るでしょうけど、そんな商売しても詰まらないし・・・

    何より、偽物の中には細部を見れば偽とわかるものもあったり。完全コピーじゃないものってありますよね。
    あれって相当資金力無いと出来ませんが、何がどうなってんでしょうか。むむむ。

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